
はじめに
中小企業や小規模事業者では、Excelを使って在庫を管理しているケースが多くあります。
Excelは簡単に導入でき、自由に項目や計算式を追加できる便利なツールです。一方、利用者や商品数、拠点数が増えてくると、次のような問題が発生することがあります。
- 複数人で同時に編集しにくい
- どのファイルが最新版か分からない
- 入出庫の入力漏れや転記ミスが発生する
- 在庫数と実際の商品数が合わない
- 担当者以外がファイルの内容を理解できない
- 外出先や別拠点から在庫を確認できない
- Excelファイルの破損や紛失が心配
- 過去の入出庫履歴を追いにくい
このような問題を解決する方法の一つが、Excelで行っている在庫管理をWebシステム化することです。
本記事では、Excel在庫管理をWebシステムに移行する場合の費用、開発期間、必要な機能について解説します。
Excel在庫管理のWebシステム化とは
Excel在庫管理のWebシステム化とは、Excelファイルで管理している商品情報や在庫数、入出庫履歴などをデータベースに移行し、ブラウザから利用できるようにすることです。
専用ソフトをパソコンへインストールする方式ではなく、Google ChromeやMicrosoft Edgeなどのブラウザからアクセスします。
Webシステム化することで、パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンから在庫を確認することも可能になります。
また、データをデータベースで一元管理するため、複数の担当者や拠点で同じ在庫情報を共有できます。
在庫管理システムの主な機能
小規模な在庫管理システムでは、一般的に次のような機能を実装します。
ログイン機能
利用者ごとにIDとパスワードを発行し、システムへログインできるようにします。
管理者、一般担当者、閲覧専用など、利用者ごとに操作権限を設定することもできます。
商品マスタ管理
商品に関する基本情報を登録します。
主な管理項目は次のとおりです。
- 商品コード
- 商品名
- 商品カテゴリー
- 仕入れ先
- 仕入れ価格
- 販売価格
- 保管場所
- 発注点
- 備考
会社の業務に合わせて、型番、サイズ、色、ロット番号などの項目を追加することも可能です。
入庫管理
商品の仕入れや返品などによって、在庫が増えた記録を登録します。
入庫日、商品、数量、仕入先、担当者などを記録することで、「いつ、どの商品が、いくつ入庫したのか」を確認できます。
出庫管理
販売、使用、廃棄などによって、在庫が減った記録を登録します。
出庫履歴を残すことで、在庫数が減った理由や操作した担当者を確認できます。
在庫一覧
商品ごとの現在庫数を一覧で表示します。
商品名や商品コード、カテゴリーなどによる検索機能を付けることで、必要な商品をすぐに探せます。
在庫数が発注点を下回った商品を赤色で表示することもできます。
入出庫履歴
過去の入庫・出庫履歴を検索・確認する機能です。
期間、商品、担当者、取引先などの条件で絞り込めるようにすると、在庫差異が発生した場合の調査にも利用できます。
CSV・Excel入出力
現在使用しているExcelの商品データを、CSV形式でシステムに取り込めるようにします。
また、システム内の在庫一覧や入出庫履歴をCSVまたはExcel形式で出力する機能も実装できます。
Webシステム化にかかる費用
在庫管理システムの開発費用は、利用者数だけでなく、必要な機能や既存業務の複雑さによって変わります。
以下は、小規模から中規模の在庫管理システムを個別開発する場合の目安です。
| 開発規模 | 主な機能 | 費用の目安 |
| 試作・最小構成 | 商品登録、入庫、出庫、在庫一覧 | 20万~50万円 |
| 小規模 | ログイン、商品管理、入出庫、検索、CSV出力 | 50万~150万円 |
| 中規模 | 複数拠点、権限管理、棚卸、帳票、通知 | 150万~300万円 |
| 大規模・外部連携あり | バーコード、販売管理・会計連携、承認機能 | 300万円以上 |
上記はあくまで目安です。
同じ「在庫管理システム」であっても、既存のExcelをそのまま再現する場合と、業務フローから見直す場合では、必要な作業量が変わります。
月額費用も必要になる
Webシステムは、開発費だけでなく、運用開始後にも費用が発生します。
主な運用費用は次のとおりです。
- サーバー利用料
- ドメイン・SSL管理費
- データのバックアップ
- セキュリティアップデート
- 障害発生時の調査
- 操作方法に関する問い合わせ対応
- 軽微な修正や機能追加
小規模なシステムの場合、サーバー費用は月額数千円程度から利用できます。
保守を開発会社へ依頼する場合は、対応内容によって月額1万~5万円程度が一つの目安になります。
ただし、保守契約に機能追加が含まれるかどうかは、契約内容を事前に確認する必要があります。
開発にかかる期間
小規模な在庫管理システムの場合、開発期間はおおむね1~3か月が目安です。
| 開発規模 | 期間の目安 |
| 試作・最小構成 | 2週間~1か月 |
| 小規模 | 1~3か月 |
| 中規模 | 3~6か月 |
| 大規模・外部連携あり | 6か月以上 |
一般的には、次の手順で開発を進めます。
1.現状の業務を確認
現在使用しているExcelファイルや、入庫・出庫・棚卸の作業方法を確認します。
この段階で、現在の問題点とシステム化したい範囲を整理します。
2.要件整理
管理する項目、利用者、必要な画面、権限、帳票などを決めます。
最初からすべての機能を盛り込まず、業務上必要な機能から優先順位を付けることが重要です。
3.画面・データベース設計
商品登録画面、在庫一覧画面、入出庫画面などの構成を決めます。
あわせて、商品、在庫、取引先、入出庫履歴などを保存するデータベースを設計します。
4.システム開発
設計内容をもとにシステムを開発します。
一定の段階で実際の画面を確認し、操作方法や入力項目に問題がないかを確認します。
5.テストとデータ移行
入庫や出庫を行ったときに、在庫数が正しく計算されるかをテストします。
現在使用しているExcelデータも整理し、システムへ移行します。
6.運用開始
利用者へ操作方法を説明し、本番運用を開始します。
最初はExcelと並行して運用し、問題がないことを確認してから完全移行する方法もあります。
費用が高くなる主な要因
次のような機能を追加すると、開発費用や期間が増える可能性があります。
複数倉庫・複数拠点の管理
倉庫ごとに在庫数を管理したり、拠点間で在庫を移動したりする機能が必要になります。
ロット番号・使用期限の管理
食品、医薬品、部品などでは、同じ商品でもロット番号や使用期限ごとに在庫を管理する必要があります。
バーコード・QRコード対応
スマートフォンやハンディーターミナルでバーコードを読み取り、入出庫を登録する機能です。
使用する端末や読み取り方法によって開発内容が変わります。
承認機能
入庫、出庫、在庫調整などについて、上司の承認後に確定させる機能です。
承認段階が多くなるほど、設計が複雑になります。
外部システムとの連携
販売管理システム、ECサイト、会計ソフト、kintoneなどと連携する場合は、外部サービスが提供するAPIの調査と連携処理が必要です。
帳票出力
在庫一覧表、棚卸表、発注書などをExcelやPDFで出力する場合は、帳票ごとにレイアウトの設計と出力処理が必要です。
費用を抑える方法
必要な機能から小さく始める
最初からすべての業務をシステム化すると、費用が大きくなります。
- 商品登録
- 入庫登録
- 在庫一覧
- CSV出力
運用開始後に、棚卸、バーコード、通知、外部連携などを追加すると、初期費用を抑えられます。
現在のExcelを整理する
同じ商品が複数の名称で登録されていたり、不要な列が多数残っていたりすると、データ移行に時間がかかります。
商品コードの統一や不要データの削除を事前に行うことで、移行作業を減らせます。
標準機能を優先する
細かな操作方法やデザインをすべて独自仕様にすると、開発費用が増加します。
業務上の問題がない部分については、一般的な画面や操作方法を採用することで、費用を抑えられます。
市販サービスと個別開発のどちらを選ぶべきか
一般的な在庫管理であれば、市販のクラウドサービスを利用したほうが、初期費用を抑えられる場合があります。
一方、次のような場合は個別開発が適しています。
- 独自の在庫計算や業務ルールがある
- Excelの管理方法を大きく変えたくない
- 見積、受注、販売なども一緒に管理したい
- 既存システムやkintoneと連携したい
- 必要な機能だけを搭載したい
- 将来的に段階的な機能追加を予定している
まず市販サービスを検討し、業務に合わない部分が多い場合に個別開発を選ぶ方法もあります。
見積もりを依頼するときに用意するもの
開発会社へ相談する際は、次の資料を準備すると話が進みやすくなります。
- 現在使用しているExcelファイル
- 入庫から出庫までの業務の流れ
- システムを利用する人数
- 管理する商品数
- 倉庫や拠点の数
- 必要な帳票
- 他システムとの連携の有無
- 希望する予算と導入時期
Excelファイルが整理されていなくても、現状のまま提示することで、開発会社が業務上の問題点を把握しやすくなります。
まとめ
Excelによる在庫管理をWebシステム化する場合、小規模な構成では50万~150万円、開発期間は1~3か月程度が一つの目安です。
ただし、複数拠点、バーコード、ロット管理、承認、帳票、外部システム連携などの有無によって、費用と期間は大きく変わります。
初期費用を抑えるには、商品管理、入出庫、在庫一覧などの基本機能から運用を始め、必要に応じて機能を追加する方法が有効です。
現在使用しているExcelを確認することで、Webシステム化に必要な機能や、おおよその費用を整理できます。
Excelによる在庫管理でお困りの場合や、Webシステム化を検討されている場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。現在使用しているExcelや業務内容を確認したうえで、実現方法と概算費用をご案内します。

